PENHALIGON’S(ペンハリガン)
PENHALIGON’S(ペンハリガン)は、1870年創業のイギリスのトータルグルーミングブランド。創設者のウィリアム・ペンハリガンが、1860年代後半に故郷のコーンウォールからロンドンに出て、ペンハリガンのルーツとなる理髪店を世界最高の紳士用品が揃う通り「ジャーミン・ストリート」に開業しました。
1872年にはジャーミン・ストリートのターキッシュバスのスチームと硫黄の香りにインスパイアされた、ペンハリガン初の香水「ハマン ブーケ」を発表。理髪店に足を運ぶお客用に香水を片手間で作っていましたが、トータルグルーマーとしての実績が評価され、後に「英国王室御用達の理髪師兼香水商」の称号を与えられました。以来、クリエイティブで画期的な香水づくりを続け、今や世界中に愛用者を持つ高級フレグランスブランドとなり、現在もフレグランスをはじめとするアイテムをすべて英国で製造しています。
英国王室御用達「ロイヤルワラント」
世界各国の王室に商品を納入しているブランドに与えられる「王室御用達」の認定の中でも、イギリス王室の「英国王室御用達(ロイヤルワラント)」は代表格。
厳しい審査や管理を経て、王室が実際に使用し、英国王室に最低5年以上納品している実績があるものから英国女王、エディンバラ大公、ウェールズ公が認めたものだけにそれぞれの紋章が与えられます。認定されたブランドは与えられた紋章(最大3つ)を掲げることができますが、5年ごとに審査があり、常に高品質の商品を提供することが求められます。
ペンハリガンは、1903年にアレクサンドラ女王、1956年にエディンバラ公、1988年にチャールズ皇太子からロイヤルワラントの認定証が与えられ、現在も両殿下による2つのロイヤルワラントを保有しています。
ペンハリガンの香水
ペンハリガンのフレグランスは、上質な天然香料と調香の先端技術によって作られており、ベースノートに重厚な香料を使用することで、香りがしっかりと持続するのが特徴。体温と人の持つ香りによって世界に1つしかないその人だけの香りとして調和されます。
香水は賦香率(ふこうりつ、香料の割合)や香りの持続性によって分類され、濃度が高い順に、パルファム、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンに分類されます。
オードパルファム(オードパルファン)-eau de parfum(EDP) |
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オードトワレ-eau de toilette(EDT) |
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オーデコロン-eau de cologne(EDC) |
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SARTORIAL EDT(サルトリアル オードトワレ)
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「OPUS 1870 EDT(オーパス 1870 オードトワレ)」からペンハリガンの香水を使い始め、今回新たに「SARTORIAL EDT(サルトリアル オードトワレ)」を通販で購入しました。
ペンハリガンの香水は100mlと50mlのサイズがありますが、私は今のところ週に1、2回程度しか香水を付けないため、今回も50mlを選びました。ちなみに20年7月から使用しているOPUSは4分の1しか消費していません。香水の消費期限は未開封で3年、開封済みで1年と言われているため、ケチらずにもう少し贅沢に使ったほうが良いですね。
「サルトリアル」の意味
「SARTORIAL(サルトリアル)」は「仕立屋」の意。ビスポークテーラーのアトリエに触発されて生まれた香りは、まさに紳士というワードがぴったりのクラシックな香調。
サルトリアルは、フランスのフレグランスブランド「ラルチザン パフューム」の専属調香師であり、かつてはコム・デ・ギャルソンのフレグランスも調香した名調香師ベルトラン ドュショフール氏が作り出し、2010年に発売しました。
ベルトラン ドュショフール氏は創作にあたり、サビル・ロウの16 番地にあるビスポークテーラー「ノートン&サンズ(Norton & Sons)」のアトリエを訪れ、洋服の生地、裁断機のオイル、古びた型紙、年季の入ったキャビネットなど、店の中の香りからインスパイアを受けたという。
オーダーメイドという意味で広く用いられるビスポーク(Be spoke)という言葉は、その名のとおり、お客が職人と会話しながら注文してつくったものを指し、サヴィル・ロウ発祥の言葉です。ペンハリガンのフレグランスはこのように紳士にちなんだテーマの銘が多くあり、スーツ、革製品、ステッキ、整髪料で整えられた髪型、ウイスキーなど、「英国紳士の生活の香り」を豊かに表現しています。
香りのテーマは“完ぺき”です。「サルトリアル」は、クラシックなフゼアの香りを現代的に解釈したもの。ビーズワックス(蜜蜂から採れる天然ワックス)の甘く染みついた香りが、オークモス、トンカビーン、ラベンダー、あるいはレザー、ヴァイオレットリーフなどトラディショナルなスパイスやエレメントとしっかり結びつき、テーラーのアトリエにいるような幻想を見せてくれます。(引用:OPENERS)
テーラーの香りをイメージして、サルトリアルの香水ボックスには、全面に針の糸通し、裏面にミシンが描かれています。
外装フィルムを外して化粧品と同じ棚に並べて保管していたところ、不覚にも化粧水か何かが付着してシミのようになってしまいました…。
イギリス製。原料はアルコール、水、香料とシンプル。
50mlは縦9cmほどで可愛らしいフォルム。
ボックスケースは隙間なくフタを被せることができます。香水の劣化を防ぐためにも普段はボックスに入れた状態で、温度変化の少ない場所で保管しています。
SARTORIAL EDT(サルトリアル オードトワレ)香りレビュー
2020年で10周年を迎えるサルトリアルは、発売同年にニッチフレグランスオスカーアワードという香りのオスカーを受賞しています。ペンハリガンのメンズフレグランスの定番である「ブレナム ブーケ」がシトラス系、「エンディミオン」や「オーパス」はウッディ系、サルトリアルはフゼア系と言われています。
香水に疎い筆者はフゼアと言われてもピンときません。植物のシダのことを指すようですが、フゼア調の香水に必ずしもシダ植物を使っているわけではないとのこと。
ラベンダー油を核にして、ベルガモット油、クマリン、オークモスアブソリュートなどのアコード(香りの調和のとれた組合せ)を基本骨格とした香調.フランス語のFouge’re(フジェール)は羊歯(シダ)のことであるが、シダの香りとは関係がなく、香りの創作のモチーフとしてこの言葉が使われた.この香調は1882年に発売された“フゼア・ロワイヤル”(ウビガン社)の香りに由来し、その後の香水創作において大きな影響を与えた.フレシュフゼア調、ウッディフゼア調、アンバーフゼア調に分類されるが、フゼア調はとくに男性用フレグランスの市場において多く見られ、重要な香調の一つとなっている.現在では、より軽く、より明るくアレンジされながら、フレグランスをはじめ、整髪剤や化粧品の香りに応用されている.(今川政樹)
香調フゼアを現代調にアレンジしたサルトリアルの香りの変化は以下の通り。
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文字面だけではさっぱり香りがイメージできないですね。一度にこれだけ香りが濃厚に混ざり合い、変化するので私の語彙力では的確に言い表せません。
スプレーした瞬間に鋭く尖った香りが立ち上がり、すぐに裁ちばさみや裁断機の金属とオイルを連想させるメタリックノートが、まるでテイラーのアトリエにいるかのように感じさせます。ハーブとスパイスが複雑に絡み合い、重厚さの中にスチームアイロンの蒸気のような清涼感も感じます。レザー、ウイスキーのスモーキーな香りがダンディな紳士像を描く。
トップからミドルノートにかけてラベンダーが香りますが、スパイシーな香料が強いせいか、甘さとフローラルはほとんど感じません。鼻にツンとくるのは付け始めだけで、ミドルからラストにかけて、落ち着いたウッディとムスクに変化して柔らかくなります。
露出した肌に付けると持続時間は3時間ほどですが、脇腹など下着で覆われている部分に付けると5時間くらいは香りを楽しむことができます。
仕事やフォーマルな場、特に英国スーツとの相性が最高なのは言うまでもありませんが、秋冬の休日にも落ち着いた雰囲気を演出するのに一役買ってくれそう。女性がつけていても違和感はありません。むしろこんな香りをまとっていたら格好良いですね。
オーパスが夏向きの爽やかな香りであるのに対し、サルトリアルはどっしりと重い秋冬向きの香り。オーパスは料理の香りの邪魔にならないですが、サルトリアルは付ける量や箇所次第ではスパイス系の香りが気になるため、食事の時間帯を避けることをオススメします。
軽さ、爽やかさ、甘み、フローラルなど昨今のフレグランス人気傾向は一ミリも感じられず、付ける人を選ぶ香りかもしれません。スーツを着た30代以上のビジネスパーソンから香ったら、上品さと真面目さを印象づけます。筋骨隆々のマスキュリンな人よりも、知的でスタイリッシュな人が付けていたほうが、よりミステリアスさが強調されて魅力に写りそう。
紳士像を体現する香り
「ブレナムブーケ」や「オーパス」といったペンハリガンの定番の香りに比べると敷居は高いかもしれませんが、私にとっては理想とする紳士像を体現する、「こんな大人に近づけるよう自分を磨こう」と思わせてくれる香りです。サルトリアルを試香するために香水売り場に赴いた時は接客に緊張しましたが、大人の余裕で足を運べるようになりたいものです。
家でじっくり香りを選びたいという肩にはペンハリガンのアトマイザー(1.5ml)の購入がオススメ。