※言語能力について書いたら前置きが長くなっております。書評だけを知りたいという方は目次から飛んで下さい。

言葉の持つ力

人間という生き物が「言葉」と「文字」を手に入れてから、「共感」というコミュニケーションを取ることができるようになりました。

言葉の持つ力は偉大です。偉人の名言が残っているように、心に響く文章は世代を超えて語り継がれます。言葉の共感力が人を動かし、この人間社会を作ってきたと言っても過言ではありません。

本を読む人が少なくなったと嘆かれる昨今ですが、言葉の存在感は仕事や娯楽の多様化により以前にも増して大きくなっています。

SNS時代に生きる全ての人たちに必要なスキル

インターネットの普及とともに今でも根強い影響力のあるブロガー、動画時代の立役者であるユーチューバー、メディアトレンドを司る芸能人、、、。一見、秀でた言語能力は必要なさそうな仕事に見えるが、それは全くの勘違いである。人を見た目で判断してはならない。

ブロガー

ブロガーと言語能力は結びつけやすいだろう。顔を出している人もいるが、彼らの売りは経験と文章力である。何を発信するか見定め、読者のターゲット層を決めたら、そこに言語レベルを合わせていく。稚拙な文のブログは伝わりやすさを意識しているのかも知れない。映画や本の批評ブログは口語では出会わないような言葉を選んで的確に伝えている。最初に読者の目にとまる記事タイトルは文字数制限のある中で、正確に、そしてキャッチーに記事内容を伝える必要がある。ブログでご飯を食べている人たちの本気度は馬鹿にならない。

面白い文章を読んで想像力、状況把握力を磨くことは、下手なYouTube動画を眺めるよりよっぽど面白い。

スタバでダベる女子大生に対し畏敬の念を禁じ得ない – もはや日記とかそういう次元ではない

スターバックス代々木上原店でジャズ調の音楽の元、深く椅子に腰掛けて優雅に足を組み、金曜日の夕暮れ前とは思えない程のスピードで携帯の画面上に人差し指を滑らせている、水瓶座風の男性を見かけただろうか その男性は十中八九、ワタクシである

 

ユーチューバー

ここ数年で勢いを増し、今や動画時代の到来を台頭する存在となったYoutube。ユーチューバーもまた言語能力が必要な仕事である。映像という視覚情報があるため、言葉に頼らずとも映像の勢いで再生回数を伸ばすこともできるだろう。しかし、再生回数は「共感」と比例する。高評価、チャンネル登録、コメント、拡散してもらうためには、視聴者の心をつかむ必要がある。映像に言語能力が加わったら最強である。逆に編集技術や撮影技術が拙くても、言語能力だけでチャンネルを急成長させるユーチューバーも存在する。

 

女性を中心に若い世代(私も例外にもれず)に絶大な人気の大関れいかさん。映像自体は切り貼りしているだけ。彼女の動画の売りは、大関れいかさんのマシンガントークと動画中に生まれる造語。コメント欄では彼女の造語が頻繁に使用されており、おそらく視聴者の日常生活にも浸透しているであろう。流行語製造ユーチューバーである。


若者に絶大な人気を誇るkemioさんも同様。一昔前まではTVが流行語を作っていたが、いまやユーチューバーがその役割を果たしている。

ユーチューバーこそブロガー以上に視聴者層を意識しなければならない。チャンネルごとに男女比率、年齢層は偏りがあることが多い。チャンネルの特徴を出すためにも言葉選び、言語レベルの調整は必要であろう。世界的ユーチューバーでは9歳でおもちゃレビュー動画で20億以上稼いでいる強者もいる。言葉に共感してもらうことは見た目以上に奥が深い。

 

本棚食堂という料理系Youtubeチャンネルは、文学を呼んでいるような感覚を味わえる。概要欄に短編が書いてあったり、他のユーチューバーには見ない高い語彙力で視聴者を楽しませている。

 

会社員

会社員も例にもれず言語化能力は職種に関わらず必須スキルである。人事、特に採用担当はポスター、ホームページ、イベント、面接とありとあらゆるチャンネルを通して就活生、そして潜在顧客をも魅了しなければならない。嘘は簡単に見破られるため、どれだけ正確に、キャッチーで魅力的に伝えられるか手腕が問われる。

マーケティング担当は言うまでもない。BtoC企業なら尚更である。一つのキャッチコピーをつくるために数十万から数百万払う企業もある。SNSを通してブランディングする人も言葉選びは慎重であろう。

社長、マネージャーになるとさらに洗練された言語能力が必要とされる。言葉で社員の心に火を灯し、正確な説明と指示でプロジェクトを管理し、助言を与える。一歩間違えればミスコミュニケーションに繋がり、大きな失敗を起こしかねない。

 

娯楽メディア

ドラマ、映画、アニメなど娯楽メディアでは多数の人たちがそれぞれの言語能力を発揮しなければならない。作家やコピーライターが文を考え、俳優、女優、声優たちはそれを正しく理解して言葉に重みをのせる。誰一人として言語能力が必要でない人はいない。

 

日本語とSNSの親和性の高さ

日本語は他言語と比べて語彙が多い、言葉の表現が豊かであると言われる。同じような単語やことわざでも微妙にニュアンスが異なる場合があり、我々日本人でも難解な言語である。

表現が豊かであるがゆえに、日本語はSNSとの親和性が高い。ツイッターが良い例だ。世界的にユーザー数が伸び悩んでいる中、日本のツイッターはまだまだ勢いがある。匿名性が高いという点で日本人に歓迎されたという側面もあるが、何より日本語がツイッターと相性が良かったというのが一つの理由であろう。

平仮名、漢字、カタカナ、絵文字という文字表現豊かさ、漢字による字数短縮、略語や造語など短文投稿のツイッターとここまで相性の良い言語は珍しい。

インスタグラムという写真と動画がメインのSNSが登場しても、ツイッターとの棲み分けができている。情報速度は圧倒的にツイッターが速いし、裏アカや陰キャと呼ばれる普段は社会に受け入れられにくい一面もツイッターでは仲間を見つけやすかったりする。

140字という限られた文字数の中で、「バズる」ためには、ことわざ、造語、略語、文章構成、ありとあらゆる日本語の可能性を模索しながら試行錯誤しなければならない。インスタグラムとは全く異なる楽しみ方である。

ツイッターが言語能力を必要とするのは言うまでもないが、他のSNSでも言語能力は必須だ。LINEではミスコミニュケーションが起こらないように言葉選びには慎重になるし、インスタグラムではストーリーにのせる文字が見る人を不快にしないような配慮は要る。他人に共感してもらうための言葉選びは必要ではないが、「正確性」と「最低限のモラル」くらいはこのSNS時代を生きる人たちに問われる言語能力であろう。

 

キャッチコピー力

ひとえに言語能力といっても、そこには多くのスキルが細分化できる。理解力(相手の言葉を正しく理解する力、想像力)、語彙力(知識としての語彙の多さ)、表現力(適切な言葉を選択する力)、文章構成能力。

その中でもキャッチコピー力とは、限られた単語数で簡潔に趣旨を伝え、時には奇想天外な視点を提供して印象に残る文章を伝える能力である。

キャッチコピーと聞くと、ポスターなど限られた文字数で物事を伝える時にしか使わない能力のように思えるが、キャッチコピーは言葉を用いる全ての場面で活かすことができる。例えば、限られた時間内で印象に残るスピーチをする時、長々と喋っては要点が伝わりにくく、記憶にも残らない。「簡潔に話せ」とよく言われるが、要点をまとめたキャッチコピーをスピーチの途中でビシッと決めると聞き手の注意を引きつけることができる。これだけでもスピーチ後に「キャッチコピー」が記憶として残る。(キャッチコピーしか残らない場合もあるが)。

今や情報過多の時代。こんなにダラダラ長い文章を書いているが、こんなのを最初から最後まで読む人なんて少数である。ニュース記事は短くなり、動画など見て理解しやすいものが受け入れられつつある。短い文章で伝える力はますます必要になるだろう。

そんな忙しない時代にも必要とされる「キャッチコピー力」を具体例とともに磨いてくれるのが記事タイトルにある「キャッチコピー力の基本」という本である。

 

【書評】「キャッチコピー力」

著者は川上 徹也さんという日本のコピーライター。企業のブランディングコンサルタントも務め、キャッチコピーに関する著書も多数出版している。

 

本の内容

◇仕事で一番必要なのに、誰も教えてくれなかった、「言葉の選び方、磨き方、使い方」

これまで、「コピーライティングに関する本」というと、広告界のスター・クリエイターの書いた本か、販促の現場で「とにかく売るための本」しかなく、専門家や現場の人だけのものだと考えられていたふしがありました。しかし、情報があふれる現代社会においては、「タイトル」「見出し」「決めゼリフ」「キャッチコピー」など、受け手の気持ちをとらえて離さない「ワンフレーズ」が、すべてのビジネスシーンで何よりも重要になってきました。そこで本書は、仕事で一番必要なのに、誰も教えてくれなかった「言葉の選び方、磨き方、使い方」を、普通のビジネスで使えるように、わかりやすく解説します。

◇「刺さる、つかむ、心に残る」コピーのつくり方77のテクニックが身につく!!

「なぜ、商品が売れないのか?」
「なぜ、企画書が通らないのか?」
「なぜ、メルマガやブログの記事にまったく反応がないのか?」
「なぜ、あなたの言葉はスルーされてしまうのか?」。

それらは、すべてキャッチコピー力が足りないせいです。

シリーズの特長の1つである、「ビフォー → アフター」のフォーマットをもとに、「名作コピーからビジネスシーンの日常のコピーまで」幅広く取り上げます。どこをどうすればよくなるかが一目瞭然なので、「刺さる、つかむ、心に残る」コピーのつくり方が自然に身につきます。広告、出版などのクリエイティブ業界の人だけでなく、商品開発や店頭でPOPを書く人まで、辞書代わりに1人1冊所持したくなる本です。

長々とした前置きなどせず、各目次ごとにキャッチコピーをつくるコツを紹介しており、その数77!

とりあえずこの本さえ持っていれば、キャッチコピーを考えたいときに辞書のように参照できるでしょう。以下、いくつかコツをピックアップしてみた。

 

自分に関係があると思ってもらう

「自分に関係がある」と思わなければ人の心は動かない。情報過多のネット社会では自分に関係が無いと思った情報は簡単にスルーされる。大勢に向けて伝えようとするより、特定の個人に向けて語りかける意識を持つと伝わりやすさは飛躍的に向上する。

「仕事の整理術」→「気がつくと机の上がごちゃごちゃになっているあなたへ」
「子供を産まない女性が増えている」→「産まないかもしれない私」

みんなが言いたかったことをスパッと言う

「『いい人』をやめると楽になる」

異質な言葉を掛け合わせる

「大人の修学旅行」
「朝のランチ」
「夫婦間BtoB取引で円満」

 

最後に

繰り返しになるが、キャッチコピー力は、程度に差はあれど必要なスキルである。これを身に付ければあらゆる場面で応用が可能だろう。意図的に言葉を操り過ぎると、メンタリストのようで信用されなくなりそうだが、素の自分でありつつ、想いを伝えるために正しい方向性でキャッチコピー力を活用するのはどんどんしていただきたい。読書量と語彙力の低下が嘆かれている今、この力は将来を明るく照らしてくれる気がする。

人事という仕事をしているが、いつも話しているときに自分の語彙力のなさには辟易する。大学時代に現在新聞記者をしている友人にどれだけ語彙力の低さを指摘されたことか…。読書からのインプットはもちろん、このブログをはじめ自分で文章を考えるアウトプットも続けていきたい。

コメントする

コメントを書く
名前