シャツに使われるボタンの素材
シャツに使われるボタンの素材は貝ボタンとプラスチックボタンの2種類に大きく分けられます。
貝ボタン
貝ボタンとは、その名の通り、貝殻を原料としてつくられたボタンのこと。主に高瀬貝、黒蝶貝、白蝶貝などが原貝として使われます。ボタン1個ずつ手作業で切削して作られるため、原価が高く、高価な衣類に使用されることが多いです。
光が当たると虹色の光沢が出て高級感があります。また、1つ1つに唯一無二の色や模様の表情があるのも天然素材ならでは。熱に強いため、アイロンがけなどで変形・変色しにくいメリットがあります。ただし、耐熱性が高い反面、耐久性が高くないため、衝撃で割れや欠けが生じることがあります。
高瀬貝
一般的な巻貝から作られ、捕獲量が多く、1つの貝から比較的多くの貝ボタンをくり抜けるため、貝ボタンの中では安価で流通量が多い素材です。表面は少し茶色っぽくなっていることが多いです。裏面に貝殻の模様があるのが特徴。
※模様が削られている場合もあります。
黒蝶貝
黒蝶貝という二枚貝から作られており、パール調の光沢があるのが特徴。黒色が濃いものほど値段が高いです。
白蝶貝
貝ボタンのなかでも最高級品として扱われる二枚貝。真珠を作る母貝として使われるため、Mother of Pearl(マザーオブパール)とも呼ばれます。濁りのない白さで、真珠のような虹色の輝きを放ちます。高瀬貝の約3倍の原価。
プラスチックボタン
ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂など素材は様々。安価で加工しやすく、耐久性も高いため、多くの衣類で使用されています。製造技術が向上して光沢感のあるプラスチックボタンも流通しています。経年劣化とともに変色することがあるのがデメリット。
プラスチックボタンが1個あたり1〜2円、高瀬貝が数十円、白蝶貝で厚みのあるものは100円前後の原価の違いがあります。
貝ボタンとプラスチックボタンの見分け方
光に当たった時の光沢・輝き
貝ボタンは光に当たるとキラキラとした光沢と虹色の輝きが出ます。光の当たり方で表情を変えるのも貝ボタン。ただし、昨今の技術向上で光沢のあるプラスチックボタンも増えてきているため、貝ボタンの輝きに慣れ親しんでいないと、輝きだけで見分けるのは難しいかも知れません。
裏面に貝殻の模様がある
高瀬貝の場合は、ボタンの裏側に貝殻の模様があることが多いので、ボタンの裏を確認するのも一つの見分け方です。
手触りが冷たい
貝ボタンは指で触るとヒンヤリ冷たく感じます。対して、プラスチックボタンは常温です。
音が違う
ボタンに衝撃を与えるのであまりオススメできませんが、貝ボタンは金属などの硬いもので優しく叩くと「カチカチ」と甲高い音がなります。プラスチックボタンは音の鳴りが鈍いです。
ボタンの模様が一つ一つ異なる
貝ボタンは一つ一つ模様が異なります。ボタンの模様が均一に揃っていたらプラスチックボタンの可能性が高いです。
貝ボタン付きの衣類は乾燥機にかけない
大学生の時に購入した日本製のシャツに黒蝶貝のボタンが付いていたのですが、当時は貝ボタンがデリケートなものだと知らず、洗濯ネットに入れて洗濯していましたが、その後タンブラー乾燥機に突っ込んで回してしまっていました。
乾燥機の中でボタンが当たって衝撃が加わった結果、ご覧の通りボタンがひび割れてしまいました。この教訓から、社会人になってからは貝ボタン付きの衣類は乾燥機にかけずに必ずハンガーで日陰干しするようになりました。
洗濯ネットに入れて日陰干したのに貝ボタンが欠けてしまった
貝ボタンの魅力にはまり、社会人になってからは貝ボタンが付いたた高価なシャツばかり購入していましたが、ある日、その貝ボタンが割れ、欠けていることに気がつきました。
お気に入りの服は型崩れや生地のダメージを抑えるため、
- 必ず洗濯ネットに入れる
- 乾燥機は使わずにハンガーで日陰干しする
これらに気を付けていたのにも関わらず、ボタンが欠けてしまったのです。
こちらは高瀬貝のボタンですが、ボタンの縁が欠けているのが分かります。貝ボタンは厚みによっても欠け・割れやすさが異なり、薄い貝ボタンは割れやすい傾向にあります。一般的なシャツのボタンの厚みは2mmですが、5mmなど厚みのある貝ボタンはその分高価ですが、比較的丈夫です。
また、角張ったり反り返ったボタンも衝撃が加わりやすく割れやすいです。逆に丸みを帯びたボタンは割れにくいと言われています。
貝ボタンを割らない、欠けないように洗濯する方法
洗濯ネット、日陰干しを徹底していたのにも関わらず、貝ボタンが欠けてしまったため、貝ボタンを絶対に割らない・欠けないように洗濯する方法を探して見つけました。
1.ボタンを外す
ワイシャツの場合は、ボタンは全て外して洗濯します。ボタンを留めたまま洗濯すると、洗濯中にボタンが引っ張られて、ボタンを縫い付けている糸が緩んだりほつれやすくなり、ボタンが取れるリスクが高まります。ボタンホールも伸びてしまいます。
ただし、ニットやポロシャツは必要に応じてボタンを留めたまま洗っても良いようです。
- ニットなど生地が伸びやすい衣類は型崩れ防止のためにボタンを閉めて洗う
- ポロシャツのように前立てが途中まで開いている衣類は、前立てが引っ張られて割けることを防ぐため、ボタンを閉めて洗う
2.服を裏返す
ボタンが洗濯槽に直接当たりにくくするように服を裏返します。裏返すことで、内側の皮脂汚れが取れやすくなり、生地表面のダメージを抑えるというメリットもあります。
裏返すと表面の汚れが落ちにくくなるため、服の表面に汚れが付いたときは手洗いします。それでも落ちない場合は、表側のまま洗濯しても構いません。
3.ボタンをアルミホイルで包む
貝ボタンを割れ・欠けにくくする工夫はいくつかありますが、貝ボタンにアルミホイルを巻くのが一番効果的です。クリーニング屋さんでもボタンを保護するために使われている方法です。
安いもので構わないので、アルミホイルをボタンの大きさに合わせてちぎり、ボタンを包みます。高級シャツはボタンが根巻きされていて高さもあるため、比較的包みやすいかと思います。
この方法だと服を裏返さなくても良いため、表面の汚れを落としたいときにも効果的です。極端な話、これだけやれば洗濯ネットを使わずとも、服を裏返さなくても、乾燥機にかけてもボタンはほぼノーダメージでしょう。
ちなみに、洗濯でボタンを包んでいたアルミホイルが取れたことはありません。
手間と時間がかかり、面倒な作業かもしれませんが、これが貝ボタンを割らない、欠けさせない究極の方法なので、高価で大切な衣類くらいは一手間かけましょう。
4.洗濯ネットを使用する
アルミホイルでボタンを包んだら、畳んで洗濯ネットに入れて洗濯します。ネットがクッションになって、洗濯槽に当たったときの衝撃や摩擦を軽減させてくれるため、生地やボタンをダメージから守ります。
- 洗濯による毛羽や糸くずの付着を防ぐ
- 衣類の毛羽立ちを抑える
- 他の衣類との絡まりや引っかかりを防ぎ、繊維ダメージを抑える
- 洗濯による型崩れを防ぐ
洗濯ネットを使う際には、ネットの中で洗濯物が適度に動かないと汚れが落ちにくいため、洗濯物を詰めたときに2割の余白があると良いです。逆にデリケートな衣類は服の動きを抑えて摩擦を最小限に抑えるために、洗濯ネットの余った部分を結んで余白をなくします。
洗濯ネットの網目の違い
洗濯ネットなし | 洗浄力は最も高いが、衣類が洗濯槽に直接当たり、絡まるため、生地繊維やボタンへのダメージが大きい。 |
網目が大きい(粗い) | 水通しが良いため、洗浄力を確保しつつも、衣類の型崩れや繊維の摩擦を抑えることができる。網目を通る糸くずや毛羽は付着してしまう。 → シャツ、ズボンなどデリケートな扱いが不要な衣類 |
網目が小さい(細かい) | 水通しが悪くなるため洗浄力は落ちるが、繊維の摩擦を抑えて生地を守る。糸くずが付きにくく、型崩れや色落ちを防ぐ。 → デリケートな衣類(下着、色柄ものや装飾品付きのもの) |
5.乾燥機を使わず日陰干しする
洗濯は洗濯ネットを使用する方が多いと思いますが、乾燥機は洗濯ネットから取り出して衣類を回すため、乾燥機で回そうものなら高確率でボタンが欠けたり割れたりします。生地へのダメージも大きいため、お気に入りの服は乾燥機にかけないことを推奨します。
脱水まで終わったら洗濯ネットから衣類を取り出し、ハンガーまたは平干しネットを使って風通しの良い場所で日陰干ししましょう。その際にボタンを包んでいたアルミホイルを取ります。
アルミホイルのおかげで貝ボタンの割れ・欠けゼロに!
貝ボタンを割らない、欠けさせない洗濯方法を紹介しましたが、アルミホイルでボタンを包むようになってから貝ボタンが割れたり欠けたりすることはなくなりました。
お気に入りの服のボタンが傷つくと結構へこみますので、一手間かけて貝ボタンを守りましょう。