メキシコ最大級のお祭り「サンマルコス祭り」(Feria Nacional de San Marcos)
アグアスカリエンテスでは、毎年4月中旬から5月初旬までの数週間にわたり、メキシコ最大のお祭りとも言われるほどの「サンマルコス祭り(Feria Nacional de San Marcos)」が開かれます。
聖マルコスの日(4月25日)を祝い、アグアスカリエンテスの産業でもあるワインの原料のブドウの豊作を祝うものとして1848年に始まったのが起源で、現在ではメキシコの伝統的な祭りの一つとして、全国各地から人が集まる観光イベントになりました。
闘牛「Corrida de toros」
牛と闘牛士が戦う競技、「闘牛(Corrida de toros)」。スペインの国技として有名ですが、昨今では動物愛護団体からの強い批判と観客の減少から、スペインのカタルーニャ州では闘牛が禁止されました。
かつでスペイン領だったメキシコでも数百年の歴史がありますが、メキシコでも闘牛開催の是非が法廷にも持ち込まれ、2022年には一時停止する(2024年から再開)などいつまで続くか分からない状態となっています。
サンマルコス祭りで闘牛鑑賞
アグアスカリエンテスの中心地にある大きな闘牛場では、サンマルコス祭り中に闘牛が実施されます。2024年からシティで闘牛が再開されたということで、ここでも同様に開催が決定。以前、スペインを旅行した時に見ることができなかった闘牛を人生で1回は見ておきたいということで、闘牛好きの同僚に連れて行ってもらいました。
チケットは販売窓口で買えますが、同僚が前もって用意してくれていました。日陰と日向、各席のグレードで値段が決まるようですが、私たちは日向の三等席に座りました。1人500ペソ(約4100円)でした。
なお、リュックサックなど大きなバッグは持ち込みができません。入口で運営担当者に無料で預けることはでき、人のものと間違えないようにチケット交換式で保管してくれますが、なるべく手ぶらで行くことをオススメします。バッグから貴重品とカメラだけ取って中に入りました。
二等席以下は見ての通りコンクリートの階段に座る形です。私は気になりませんでしたが、お尻が痛くなるのが気になる方は、会場で闘牛やアグアスカリエンテスにちなんだ座布団が売り歩かれているので買っても良いと思います。
水やお酒も会場で購入します。水を買いましたが、同僚にビールを奢って貰いました。
前座:フラメンコ
18時頃いよいよ開始。まずは前座でフラメンコの踊りがありました。
可愛らしいキッズたちも踊ります。
闘牛士(matador、マタドール)
続いて本日出演する闘牛士の紹介。闘牛士はスペイン語でmatador(マタドール)と言います。
この日はスペインや地元アグアスカリエンテス出身などの4人の闘牛士が計7頭を相手にパフォーマンスを行いました。
槍士(Picador、ピカドール)、助手(Banderillero、バンデリジェーロ)
続いて、槍士(Picador、ピカドール)と助手(Banderillero、バンデリジェーロ)の紹介。
闘牛開始 ※閲覧注意
そしていよいよ闘牛開始。
ここからは闘牛の流れを写真とともにお伝えしますが、残酷なシーンもありますので、ご注意ください。
まずは牛の入場。闘技前に極限のストレスを与えられた牛が解放されます。
まずは牛の体力を奪うため、3〜4人の助手(Banderillero、バンデリジェーロ)がカポーテ(Capote)と呼ばれるカラフルな布を使い、走り回る牛を会場内を回るように誘導します。闘牛士に牛の運動適正や性格を判断させる目的もあるんだとか。
闘牛士の見習いということで、観客が沸くようなギリギリで避けるパフォーマンスではありませんが、気を抜いたら角が刺さってケガをするので緊張感があります。
続いて槍士の登場。牛に怯えないように目隠しされた馬に乗った槍士が2人現れ、助手に誘導された牛の肩のコブあたりを狙って槍を刺します。
牛もかなり興奮しているので、槍で刺されても馬ごとひっくり返す勢いで突進し続けます。会場の弊まで追いやられて落馬しそうになる場面もしばしば。ケガしないように馬は防具を着ています。
槍が刺さったら、またしばらく助手たちが牛の体力を奪うために誘導します。
続いて、バンデリラ(Banderilla)と呼ばれるカラフルな杭を2本ずつ持った助手(Banderillero、バンデリジェーロ)が3人登場し、牛を避けながら背中に突き刺していきます。
そしていよいよ闘牛士(マタドール)の登場。ここからは闘牛士と牛の一騎打ち。ムレータ(Muleta)と呼ばれる、赤いフランネル製の布を使って華麗に牛を誘導、避けて体力を奪います。
観客は闘牛士がギリギリで華麗に避けるタイミングで、「Olé! (オーレ!)」とかけ声を出して盛り上がります。
そして最終局面。闘牛士がエストック(Estoc)と呼ばれる細長い剣を取り出し、ムレータに隠して牛を誘導しながら、トドメの一撃を狙います。
闘牛士が牛に剣を向けるのを合図に、会場は静かに固唾をのんで見守ります。そして、タイミング良く牛を避け、背中に剣を刺します。
ここで一撃で剣を柄までしっかり刺すことができれば、観客から拍手喝采が起こります。逆にうまく剣が刺さらなかった場合はブーイング。何とも残酷ですが、その場合は剣がしっかり刺さるまで何度も挑戦します。
1人目の闘牛士は見事に一撃で剣を刺すことができました。
剣が刺さって瀕死となった牛は、ヨロヨロで動きますが、その場で倒れて闘牛は終了となります。最後は倒れて動かなくなった牛にロープをかけ、馬二頭が引きずって退場します。なお、死んだ牛は買い取られます。
この一連の流れを6頭、ないしは7頭ほど行うそうです。文化として一度は見ておきたかったので、そうい意味では良い経験になりましたが、同じことを繰り返すだけなので、後半は正直見疲れしました。
一緒に来ていた同僚の日本人家族のお子さんは泣いてしまい、途中で帰ってしまったので、見ていて気持ち良いものではないです。
2人目の闘牛士も見事に成功。
4回目は1回目の闘牛士が再登板。
しかし、闘牛は闘牛士も牛もお互いに命がけ。上手く避けられず牛の角が刺さって投げ飛ばされてしまい、ケガを負いました。
それでも闘牛士は続行の意志を見せ、試合継続。
血まみれで満身創痍になりながらもトドメを刺し、観客から拍手を浴びながら会場を後にして病院に向かいました。
5回目。
6回目はこちらの方が再登板。アグアスカリエンテスの出身ということで地元客からの歓声も一際大きく、牛避けパフォーマンスも熟練者でした。
うまく決まり、観客から歓声と共に花が会場に投げ込まれました。テキーラももらってその場で飲み、そのまま最終戦へ。
一撃で決めることができず苦戦しましたが、数回トライして剣を刺すことができました。
貴重な文化体験
長い歴史がありながらも、時代の流れからいつまで続くか分からない闘牛。コロンビアでも2027年に禁止となる見込みで、人と牛が対峙する闘牛の残る実施国はスペイン、フランス、ポルトガル、メキシコ、ペルー、ベネズエラ、エクアドルとなっています。
個人的には1回見れば十分だと思います。今しか見ることができないかもしれないという意味では貴重な文化体験になりました。