CARL HANSEN & SON (カールハンセン&サン)
CARL HANSEN & SON (カールハンセン&サン)は、1908年に家具職人のカール・ハンセンが小さな工房をデンマークのオーデンセに開設して創業されたデンマークのデザイン会社。1934年に息子のホルガー・ハンセンが事業を継承し、2002年に3世代目にあたるクヌッド・エリック・ハンセンがCEOに就任して長年続く家族経営企業となっています。
オーレ・ヴァンシャー、フリッツ・ヘニングセン、コーア・クリント、 モーエンス・コッホ、ポール・ケアホルムといったミッドセンチュリー(インテリア最盛期の1940~1960年代)を代表するデンマーク人のデザイナーと協業して高品質でデザイン性に富んだ家具を製作してきました。
なかでも、1949年から協働がスタートした世界的な家具デザイナーのハンス J. ウェグナーの存在が大きく、名作のYチェアをはじめ、数々の名作デザインをカール・ハンセン&サンから発表してブランドの発展に大きく寄与しました。
Hans J Wegner(ハンス J. ウェグナー)
Hans J Wegner(ハンス J. ウェグナー)は、20世紀を代表する世界的な家具デザイナーの一人(1914-2007)。椅子の巨匠として知られ、500脚以上の椅子をデザインしています。その多くが名作として国際的に高い評価を受けており、デニッシュモダン、北欧デザインを牽引したデンマークデザイン界の偉人です。その偉大な功績に対して、王立美術大学から名誉学士号が贈られているほか、英国ロンドンの王立工業デザイナー協会の名誉会員にも選出されています。
ウェグナーは17歳にして木工マイスターの資格を取得し、1934年にコペンハーゲン工業学校の家具美術コースに入学。1943年に自身のデザイン事務所を開設しました。1949年に初めてカール・ハンセン&サンのためにデザインした椅子「CH24(Yチェア)」が1950年の発売とともに大きな反響を呼び、世界中から注目を浴びました。
名作椅子「Yチェア(WISHBONE CHAIR、CH24)」
ハンス J. ウェグナーがデザインした「CH24(WISHBONE CHAIR)」は、Y字形の背もたれの形状からYチェアの名前で親しまれています。アームと背もたれを一体にした画期的な設計、流れるように美しい有機的なフォルム、温かみのある木製パーツ、座面のペーパーコードが特徴です。
Yチェアの製作は100以上の工程があり、その多くが職人の手で仕上げられています。スウェーデンの針葉樹を原料とする直径3mmのペーパーコードを約150m使い、職人が1時間かけて編む座面は強度と耐久性に優れています。
また、Yチェアはデンマーク家具メーカー品質管理の保証を受けた最初の製品であり、前後の揺れ動き耐久試験で合格基準の5万回を優に超え、25万回をクリアした歴史もあります。
デザイナー家具の椅子は数十万円するものが多い中、Yチェアは10万円前後と比較的安価であるため、世界中で人気が高く、年間数万脚以上が製造されています。特に日本での人気が高く、6000〜8000脚(生産数の4分の1ほど)が日本で売れています。
同じくウェグナーがデザインし、カールハンセン&サンが販売する「CH71(通称:ミニベア)」というラウンジチェアは約40万円もします。
Yチェアの種類
材質
ビーチ(ブナ) | 白く滑らかな木肌に細かく小さな斑点があるのが特徴。 |
オーク(ナラ) | 木目の中に「虎斑(とらふ)」という虎の背中の毛に似たまだらのある木目が特徴。 |
アッシュ(トネリコ)
| 白~淡い黄褐色で、はっきりとした並行で綺麗な木目が出ているのが特徴。 |
マホガニー | 赤茶色の木肌に「リボン杢」と呼ばれる、縞模様の木目が特徴。光に当たると光沢が出て高級感がある。 |
ウォルナット | 茶褐色で紫がかった色をしており、整った木目と部分的に現れる濃い縞が特徴的。衝撃に強く、経年変化や重厚感を楽しめる高級木材。 |
上から順に価格が高くなります(¥86,900〜¥196,900)。上記通常ラインナップ品に加え、限定品でチーク、チェリーなどの材質で製作されたこともあります。
仕上げ
ソープ仕上げ | 石鹸の塗膜で家具を保護し、木目の美しさと木の持つ自然な風合いを生かした、白色系の木材に使用される仕上げ。2〜8週間毎に石鹸を使ったメンテナンスが必要。 |
オイル仕上げ | ソープ仕上げに比べて色が濃くなり、汚れが目立ちにくく、使い込むほどに光沢感が得られるのが特徴。キズがついてもオイルを塗り直すことで目立ちにくくすることができます。年に数回、オイルメンテナンスが必要です。 |
ラッカー仕上げ | 木の質感を残しつつも、オイル仕上げよりも傷や汚れをつきにくくした塗装。 |
カラー塗装(ラッカー塗装、合成樹脂、ウレタン塗装) | 木部の表面に塗膜を作り、木を湿気、汚れから守ります。経年変化が起きることがなく、見た目をキープしてくれます。木の質感は感じにくく、ツヤっぽい光沢は好みが分かれるところ。塗装が剥がれると目立つ。 |
カラー塗装(水性マット) | 2020年から発売70周年を記念して発売された水性マットカラー仕上げ。通常カラーに比べて淡くソフトな色合いが特徴で価格も安い。 |
座面の色、高さ(SH、シートハイ)
座面のペーパーコードの色はナチュラルとブラックの2種類があります。価格が異なり、ブラックペーパーコードはナチュラルより約1.4万円ほど高く、納期に時間がかかる場合が多いです。
また、座面の高さは標準の45cmと受注生産の43cmの2種類があります。床から座面までの高さ(SH、シートハイ)は座り心地を大きく左右するため、椅子選びで最も気を付けるべきポイントです。
座った時に踵が床にしっかりつく高さがちょうど良いのですが、Yチェアの通常品の座面高さは45cmで少し高め。以前は日本人向けの43cmが標準仕様でしたが、現在はEUサイズ(45cm)が標準になり、日本サイズ(43cm)は受注品扱い(オプション料が11,000円、納期に時間がかかる)となっています。
目安として、身長170cm以下の方は43cm、175cm以上の方は45cmを選ぶのをオススメします。171〜174cmの方は好みで選ぶと良いと思いますが、身長171cmの私は43cmがぴったりでした。
【レビュー】名作「Yチェア(CH24、ビーチ材、黒塗装、日本仕様)」
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楽天通販のアトラクトさんで憧れのYチェアを購入しました。楽天ポイントが付いたので座面高変更の11,000円は実質無料になりました。
黒塗装のナチュラルペーパーコード。木材は一番安価で定番のビーチを選びました。
座面高を43cmで注文したため、受注生産で時間がかかり、昨年11月末に注文し、約4カ月かかって4月初旬に届きました。
大きな段ボールに丁寧に包装されて送られてきました。
キャンペーンでミレーのビスケットと「Yチェアの秘密」も付いてきました。
カールハンセン&サンのブランドタグ。裏側には、第三者機関のFSC(Forest Stewardship Council、森林協議会)が「適切に管理された森林」と認めた森で生産された木材「FSC認証材」であることを証明する説明書きがあります。カールハンセン&サンでは9割の木材がFSC認証を取得しており、2025年までにFSC認証材100%を目指しているとのこと。
Yチェアのデザイン
背もたれからアームにかかるR曲線、それを支えるY字の背板、微妙に太さを変えながら足元へ続く四脚、Xに張られたペーパーコード、どこから見ても惚れ惚れするデザインです。
手で握りやすい直径3cmの丸棒アームは、木材を曲げて作られています。背中部分は丸棒のままだと背中と線で接して圧力がかかってしまうため、背中を面で支えるように斜めに削られています。
また、U字型アームの先端をやや開き気味にすることで、斜めに座った時でも背中が面で支えられるように工夫されています。
ソフトシリーズのブラックはマット仕上げですが、こちらの通常カラー塗装は艶があり、高級感があります。輪郭がはっきりとしていてツルツルした質感です。
Yチェアと呼ばれる由来のYパーツ(背板)。鳥の鎖骨(wishbone)に形が似ているため、海外では「ウィッシュボーンチェア」と呼ばれることもあります。無垢材ではなく、表裏の材と同じ共芯材で成形された合板を使用することで、形を安定させて組み立てや使用中に割れるのを防いでいます。
3次元に見える2次元カーブの脚。側面にある板(サイドバー)は後ろ脚にかけて太くなっており、椅子で壊れやすい後脚の付け根の強度を補っています。前後の脚に付いている丸棒(フロントバー、バックバー)は真ん中にかけて太くなっており、椅子がたわまないようにこちらも強度を高める工夫がこらされています。
座面裏には本物の証明であり、修理を受ける際に必要となるシリアルナンバーが記載されたアルミプレートが張り付けてあります。
裏側にはペーパーコードの結び目があります。
Yチェアの座り心地
新品の状態ではペーパーコードがピシッと張った状態のため、使い始めは座る度にバチバチという音がして座り心地が少し固く感じるかもしれません。1週間ほど使うと、バチバチ音も減り、ペーパーコードが程よく緩んで心地良い座り心地になります。適度なテンションとクッション性があるので、長く座っていても疲れません。使用者のお尻の形に合わせて馴染んでいき、数年経つと更にフィット感が増すのだそうです。
ペーパーコードの座面は通気性が良く蒸れないので夏はとても涼しいです。また、冬も木材や金属に比べて温度変化が少なく冷やっとしません。暖房が効いた部屋なら温かい空気が通ります。
前脚が垂直に突出していますが、使用上で邪魔に感じることはありません。
背もたれに体重を掛けて深く座り、肘掛けに腕を置いて座るとリラックスした姿勢でアームに包み込まれながら広い座面にゆったりと座ることができます。
肘置きに支柱がないので、正面だけでなく、横を向く、あぐらをかく、立て膝をつく、背に向かって座るというように体の自由がきくというのも魅力です。
軽い、丈夫、安定している
Yチェアは材質や座高によって異なりますが、座面がペーパーコードのため、椅子の重量が約4〜5kgと比較的軽いです。毎日出し引きするダイニングチェアが重いと扱いづらく感じるので、片手で動かしたり軽々持ち上げられるほど「軽い」というのは非常に重要です。
さらに、アームをつかんで立ち上がっても椅子がずれず、背もたれに寄りかかっても脚が浮かない安定さも抜群です。
Yチェアのケア、お手入れ
日常のお手入れは
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これだけです。
カール・ハンセン&サンで使われているペーパーコードは、表面を1本1本を蝋でコーティング(ワックス加工)されており、水を弾き、汚れが付きにくいため、特別なお手入れは不要です。
ソープ仕上げやオイル仕上げの場合はご自身で石けん水やオイルを使ってメンテナンスが必要です。強い直射日光が直接当たる場所や湿度・温度変化が激しい場所での使用は変色・変形の原因となるため避けましょう。
Yチェアの保証・修理
カールハンセン&サンの家具は、納品日から最長5年間の保証が付いています(ペーパーコード、塗装及び樹脂部品は1年)。ユーザーが定期的に行うメンテナンスの方法も公式HPでレクチャーしており、修理に関しても有償で受けてくれます。ペーパーコードは10〜20年で張り替えが推奨されています。
Yチェアの偽物はある?正規取扱店からの購入が安全
Yチェアは2012年に立体商標登録される以前は、リプロダクト(ジュネリック製品、意匠権の期限が切れた製品を、オリジナルデザインをもとに出来るだけ忠実に復刻生産した製品)を名乗る模倣品が出回っていました。
現在は立体商標登録されているため、Yチェアのリプロダクトを名乗ることは出来ませんが、似たような名前で数万円の模倣品が販売されていたりします。当たり前ですが、本物と安い偽物では材料、組み付け、仕上げ、安全性、強度のいたる部分で品質が異なります。一見、見た目は似ていても、座り心地や安全性の観点からすると信用できないので正規取扱店で本物を購入しましょう。
本物のYチェアには座面裏にシリアルナンバーが付いていますので、それで見分けられるかと思います。
Stores | Carl Hansen & Søn | Danish Design
カール・ハンセン&サンのフラッグシップ・ストア及びお取扱いディーラー各店のご案内しています。最寄りのお取扱いディーラー検索はこちら
公式HPで正規取扱店を検索することができますので、通販で購入する場合は事前に調べておくのが良いでしょう。私が購入したアトラクトさんは高知県のインテリアショップで、正規店として登録されていました。
Yチェアを安くお得に購入する方法
①楽天通販のポイント還元を利用する
私は楽天通販でアトラクトさんで購入しました。当時は定価¥89,000+座面高変更¥10,000で¥99,000でしたが、楽天ポイントが1万ポイント以上付いたので座面高変更が実質無料になりました。
現在は定価¥110,500に値上がりしていますが、ポイントキャンペーンをうまく利用すれば2〜2.5万ポイントくらい付くので、実質2割引きで購入できます。家具需要が高まっており、材料も高騰しているので価格改定する前にもう1脚狙いたいですね。
②インテリアショップの店舗や通販のキャンペーンを利用して買う
インテリアショップのアクタスやSEMPRE(センプレ)でキャンペーン、クーポン、ポイント還元を利用すれば定価よりもお得に購入可能できます。45cmの標準座高なら納期もそこまで時間がかからないので、急ぎで欲しい場合は楽天通販よりこちらをオススメします。
完成された名作椅子
美しいデザインと佇まい、扱いやすさ(丈夫で軽い)、座り心地の良さ、手に届く価格。これらを満たす完成された名作椅子です。木材部品は最新鋭の機械を導入して品質向上とコスト削減を実現しながら、座面のペーパーコードは発売当初と変わらず人の手でつくられるため、しっかりとクラフトマンシップを感じることができます。材質、カラーが豊富なので、同じYチェアでも個性が出ます。
高い買い物で納期も長かったですが、それだけの価値のあるチェアでした。2022年買って良かったモノの1つです。
オススメ度:★★★★★(5.0/5.0) |