「モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~」

原題:Modern Love
製作国:アメリカ(2019年)
シーズン1:2019年にAmazon Primeで配信

モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~(Modern Love)」はアメリカの日刊新聞紙ニューヨーク・タイムズの人気コラム「MODERN LOVE」に投稿されたエッセーを基に製作されたアマゾンオリジナルのテレビドラマシリーズです。

1話完結型のオムニバスドラマ。毎回主人公や登場人物は異なり、唯一の共通点はニューヨークが舞台であること。1話約30分でほぼ全てハッピーエンドなので、気軽に見ることができます。恋愛中心ですが、実話に基づいているため、派手な演出はなく、現実的でそこが良いです。

また、人種の坩堝であるアメリカの自由の象徴ニューヨークといえば、多種多様な人や価値観が存在する空間。よくある陳腐なドラマでは「理想の恋愛像、夫婦像はこうあるべきだ」と一括りにされがちですが、ここニューヨークにはそんなものはありません。

人種、性別、年齢、価値観、苦悩、幸せ、誰一人として同じ人生を歩んでいないからこそ生まれる物語があります。

思いも寄らない人物との友情。失恋のやり直し。転換期を迎えた結婚生活。デートとは言えないかもしれないデート。型にはまらない形の家族。これらすべては、ニューヨーク・タイムズ紙の人気コラム「Modern Love」に実際に投稿されたエッセーに基づく、愛の喜びや苦悩についてのユニークな物語だ。

アマゾンオリジナルのため、プライム会員限定で視聴することができます。

 

ジョン・カーニー監督の音楽と雰囲気が最高なオープニング

まず、オープニングが毎回スキップせずに見てしまうくらい素敵です。
「ONCE ダブリンの街角で」、「はじまりのうた BEGIN AGAIN」、「シングストリート 未来へのうた」といった個人的にも大好きな音楽映画を世に送り出しているジョン・カーニー監督が携わっています。

オープニング曲「Setting Sail」とともに、様々な愛の形が写真として流れていきます。誰とも分からない赤の他人の日常の写真なのに、そこに写るものは紛れもなくドラマです。ドラマや映画にばかり夢見がちですが、現実の世界も素敵な人々と一緒ならドラマのように見えるのかもしれません。シンプルなオープニングでここまで心にグッとくるものはありません。

 

「モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~」感想(ネタバレ)

ストーリーは見れば分かると思うので、感想を中心に書きたいと思います。(ネタバレあり)全8話ありますが、印象に残った個人的にオススメのエピソードを紹介します。

 

第1話:私の特別なドアマン(When the Doorman Is Your Main Man)

ドラマの1話目でその後のエピソードを見るか見ないか決める人も多いのでは?そんな期待のかかる1話目ですが、「私の特別なドアマン」は視聴者の中でも人気を誇るベストエピソードです。

主人公の女性「マギー」とドアマン「グズミン」の間にはラブストーリー要素はなく、その代わりに1話目から「愛のカタチ」について視野を広げさせられます。

お恥ずかしながら、このエピソードを見始めた時点では、グズミンがマギーに対して好意を抱いており、マギーのことを大切に思っているのはグズミンだった!2人は結ばれた!みたいな陳腐なドラマの結末を予想していました。。。

マギーの妊娠が発覚して、子供を産む決心をした後からは、血も繋がっていない赤の他人であるマギーに対して、グズミンがまるで父親、おじいちゃんのように見守り、接する姿は、彼の言葉の「NYが子供を育てる」を体現しているなと思いました。恋愛だけが愛ではないという当たり前のことを教えてくれました。

日本でいうお隣さんの感覚と近いものがありますね。親でもなく、友達でもなく、身近にいる自分を見守る存在。私も幼少期に近所のおじちゃん、おばちゃんに支えられて成長してきたなと思い出させてくれました。

生まれた女の子に対してのグズミンの表情や行動は見ているほうもジーンと来るものがあると思います。マギーたちがLAに引っ越すと聞いて、黙って外に立つシーンは、ドアマンとして私情を挟まずに快く送り出さなきゃいけない使命感と別れの辛さが相まって葛藤しているのかなと色々想像させる背中でした。(こういう視聴者に想像させる演出大好きです)

素敵な男性を連れてきたマギーに対して「私が見ていたのは男ではなく、あなたの目だ」という名言で視聴者を感動させ、マギー、娘、グズミンの3人で思い出の自然史博物館に訪れるシーンで視聴者の幸せな感情を高めたところで最後のシーンはずるいですね。ベストエピソードに挙げる人や涙しましたというレビューがたくさんあるのも頷けます。モダンラブ、現代の愛のカタチを1話目から堪能しました。

 

第2話:恋のキューピッドは世話好き記者(When Cupid Is a Prying Journalist)

マッチングアプリのCEO「ジョシュア」に対してインタビューする女性記者「ジュリー」の物語。「今まで人を愛したことがありますか?」という質問からお互いの運命の人について語り合います。

若い二人の恋愛も良いのですが、それ以上にジュリーの話がドラマチックすぎてそっちメインでしたね。住所を書いた本をなくして、パリでの再会がかなわなかったことで離ればなれになった二人。17年間3カ月、ジュリーは写真を、マイケルはパリ行きの航空チケットをお互いに大切に持っていたところも切ない!

しかもドラマにありがちな再開からの過去の恋に火がついて夜逃げ!みたいなことはなく、17年間3カ月を取り戻すように寄り添って一晩過ごして終わり。肉体関係もありません。17年間は二人の関係を元に戻すには環境が変わりすぎていました。それぞれの現実に戻って、おそらく二度と会うことはないでしょう。それでも、マイケルに会えたことでジュリーは前に進み始めます。ジュリーの恋愛は本当にドラマのような、そして大人の恋でした。

 

第3話:ありのままの私を受け入れて(Take Me as I Am, Whoever I Am )

アンハサウェイが主人公役ということで、注目のエピソード。

最初は煌びやかな衣装とダンスと曲で「ラ・ラ・ランド」を彷彿とさせる恋愛ミュージカルの演出で始まります。そして一転してストーリーが急に重くなります。

部屋を綺麗にして着飾って準備していたのに、急に動けなくなるシーンは見ていて辛いです。良いところばかり見せて生活していたら窮屈です。周りの期待に応えようとしてどんどん自分の弱みを見せられなくなります。このエピソードでは、自分をさらけ出すことの大切さ、自分の裏も表も共有することでそれを受け入れて支えてくれる人がいるということ、一期一会の出会いについて考えさせられるドラマでした。

ここでは紹介しませんが、第5話のエピソードも自分をさらけ出すことにテーマが置かれています。

 

第8話:人生の最終ラップはより甘く(The Race Grows Sweeter Near Its Final Lap )

恋愛は若者だけのものではありません。人生の山谷を乗り越えて、歳をとって成熟した大人の恋は濃密です。「老年の恋は特別で現実的です。人生の浮き沈みを経験してもなお、愛する人を失うことは乗り越えるのが難しい」というジェーンの言葉には重みがあります。

ケンジさんとの思い出はどれも心温かくなるものばかり。ケンジさんの言動が紳士過ぎて、若者顔負けのデートに見習う点が多々ありました。

ケンジさんと出会ったきっかけで、夫婦となった後もともに楽しんだジョギングをしながら前に進もう、人生を走り切ろうとするジェーンの走る姿が明るいBGMとともに流れます。

ここからサプライズ。ニューヨークを舞台にした全8話の主人公たちが「雨」という天気で同じ時間を共有してそれぞれの生活が映し出されます。

  • ゲイカップルに子供を託した女性の裏話(第7話)
  • マギーに傘をさして寄り添うグズミン(第1話)
  • アプリで素敵な男性と出会ったジュリーに再開するジョシュア(第2話)
  • ロブとヤスミンが出会ったきっかけ(第5話)
  • ありのままをさらけ出して前に進み始めるレキシー(第3話)
  • 2人の時間を大切にしてテニスをするデニスとサラ(第4話)
  • 年上上司と離れて大人として同年代の彼氏を作ったマデリン(第6話)
  • 雨の中ジョギングを続けて一歩一歩明日へ進むジェーン(第8話)

ニューヨークという一つの舞台でこれだけのドラマがあり、「モダン・ラブ ~今日もNYの街角で~」のタイトルを回収していきました。まとまりがあってあと味の良い締め方です。

雨の中前に進もうとする演出は「シング・ストリート」のラストを思い出しました。ジョン・カーニー監督は雨を前向きに使うので印象に残りますね。

 

総評

Netflixもオリジナルドラマに定評がありますが、あちらは現実から離れて楽しむドラマが多いため、現実的なドラマで攻めてきたアマゾンはなかなか良いところを突いてきていると思いました。

シーズン1はプライムビデオで2019年10月18日から配信されており、既にシーズン2の製作が決定しています。

温かいエピソードで荒んだ心を30分で癒やしてくれるドラマでした。しかも派手な脚色はないため、現実的なところが主人公に感情移入しやすくて良いです。ハッピーエンドで老若男女見る人を問わないので、誰かと一緒に見て感想を共有したいですね。寝る前に見たら気持ちの良い状態でぐっすりできると思います。私は一人で全部見ましたが、大切な人ができたらもう一度見返したいと思います。

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